東京大学 ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構 量子イノベーション協創センター

2018年 6月号 No.129

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1【機構活動】●「わかる量子情報」で第12回PIセミナーが盛況に開かれました
2【特論情報】●7月19日に特論・企業集中講義がNEC・筑波で行われます
3【周辺情報】●7月7日に国際光デー記念シンポが開催されます
4【受賞情報】●舘林、野村先生がレーザー学会奨励賞、独イノベ賞をそれぞれ受賞
5【基金情報】●古澤研究室の光量子コンピューター研究支援が東大基金に
6【メディア情報】●機構関係者に関する掲載記事を紹介します
7【会議紹介】●関連会議・行事を紹介します
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☆★☆記事内容★☆★
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1【機構活動】●「わかる量子情報」で第12回PIセミナーが盛況に開かれました
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★機構は6月15日(金)に駒場リサーチキャンパスで、“だれにでもわかる量子情
報”と題して「第12回フォトニクス・イノベーション(PI)セミナー」を開催しまし
た。量子情報の中でも注目を集めている量子暗号の量子鍵配送(QKD)および光量子
コンピューターについて、それぞれ東京大学工学系研究科附属光量子科学研究セン
ター長の小芦雅斗教授、同工学系研究科の武田俊太郎助教(古澤研究室)の両先生に
ご講演いただきました。『だれにでもわかる』の通り、両先生とも全体状況と課題等
を俯瞰のうえ、それぞれ最新の到達点に至るまで講演いただき、満席の会場からの質
問もたくさん寄せられ、講演終了後の個別質問がしばらく続くほどの盛況を見せまし
た。

 当日は工学系研究科の竹中充准教授の司会で始まり、まず小芦教授が「量子鍵配送
のセキュリティ:Why and How」と題して、究極のセキュア通信といえる量子暗号の
解説から始まり、従来の不確定性原理に基づいた量子暗号にまつわる素朴な疑問を取
り上げながら、それにこたえる形で、誤り率の監視に依存しない新しい量子鍵配送技
術として、最新の総当たり差動位相シフト量子鍵配送技術(RRDPS QKD=Round-Robin
Differential Phase Shift Quantum Key Distribution)についての解説を行いまし
た。

 次に光量子コンピューターについて、武田助教は、量子コンピューターの歴史から
ひも解き、現在、世界の名だたる企業が量子コンピューターの開発競争を展開し、話
題が沸騰しているが、その現状は課題山積で、皆スタートラインに立っている認識の
もとに、「我々は光で量子コンピューターを開発したい」と強調しました。量子コン
ピューターの物理系には超伝導量子ビット回路や電子スピン、光子の縦横偏光など、
さまざまある中で、量子テレポーテーションベースの光量子コンピューターの要素技
術の説明を様々な既存技術との対比を示しながらわかりやすく解説、量子コンピュー
ターの最大の課題である大規模化の切り札として、ループ型光量子コンピューターの
提案について解説しました。

 両講演とも工夫を凝らし、わかりやすい講演であったためか、質疑も時間の許され
る範囲で積極的に行われ、活気のあるセミナーとなりました。最後に、荒川泰彦ナノ
量子機構・量子イノベーション協創センター長から、主催者として両講演者に対して
感謝の意と今後も光エレ実装プロジェクトに関わる分野や関連する分野で積極的に開
催していきたいと閉会の挨拶がありました。

 PIセミナーは新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)プロジェクト「超低消費電
力型光エレクトロニクス実装システム技術」(プロジェクトリーダー=荒川泰彦特任
教授)に関わる成果普及と人材育成を目的とした「フォトニクス・イノベーション共
創プログラム(PICC)」に基づいて、社会人、学生向けに、ナノ量子機構が主催して
いるセミナーです。

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2【特論情報】●7月19日に特論・企業集中講義がNEC・筑波で行われます
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★機構主宰による大学院理学系研究科・工学系研究科共通科目「ナノ量子情報エレク
トロニクス特論」の今年度2回目の企業集中講義が7月19日(木)午後13時40分からつ
くば市のNEC筑波研究所で行われます。午後13時20分までにつくばエクスプレス・つ
くば駅そばに集合し、バスで同社筑波研究所に向かいます。
 
 当日の講義内容はNECの中央研究所およびシステムプラットフォーム研究所紹介の
後、ドローン自律飛行技術、フレキシブルエレクトロニクス、スピン熱電デバイス、
量子ドット赤外線センサなどについて、ラボツアーを予定しています。

 ↓↓↓(NEC筑波研究所アクセス)↓↓↓
 https://jpn.nec.com/profile/branch/tsukubalab.html

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★6月21日(木)に千葉県柏市のシャープ材料・エネルギー技術研究所で「ナノ量子
情報エレクトロニクス特論」の今年度初めての企業集中講義があり、40名を超える学
生が参加しました。同社生活環境ソリューション研究所の湯浅貴之所長から、シャー
プ全体および研究開発の考え方についての紹介と8KTVの医療など、多方面への展開、
半導体レーザー開発の歴史と今後の応用展開、また特徴的な技術開発例として、犬の
健康管理について紹介がありました。次いで柏事業所を所管する材料・エネルギー技
術研究所の津田裕介所長からは企業の研究開発はどう進めているかという観点から柏
事業所の紹介とラボツアーの説明がありました。

 ラボツアーは採光フィルム、蓄熱技術、I o Tセンサー、亜鉛空気電池の4つについ
て、見学しました。採光フィルムは特殊な光学フィルムを設計開発し、太陽光を室内
奥まで取り入れて、省エネに役立てる技術です。蓄熱技術はTEKIONの愛称で社内ベン
チャーとして、実用化に向けられている異色の技術。マイナス24~プラス28度Cとい
う広範囲に氷の融点を選択できる蓄熱材を開発し、用途に応じて最適な温度に冷却す
る不思議な材料で、川上から川下までの社内ベンチャースタイルで開発を進めている
姿が、見学者の関心を集めていました。また、I o Tセンサ通信モジュールについて
も既存の工場計器などをI o Tデバイスで無人計測するなどの応用研究について説明
がありました。充放電が可能な亜鉛空気電池の開発についても具体的な応用に向けた
説明がありました。

 《 特論受講者対象のインターンシップ実施も発表 》

 当日の企業講義の中で、シャープが「ナノ量子情報エレクトロニクス特論」受講生
を対象に絞ったインターンシップを初めて実施することも発表しました。期間は8月
20日(月)~9月28日(金)の間の2週間(10日間)、奈良県天理市にある生活環境ソ
リューション研究所で行われます。研修テーマは量子ドット半導体の高効率、狭線幅
な光学特性を生かし、次世代の8K/4Kテレビ放送に準拠した色再現性の高いディスプ
レイデバイスの試作・評価を経験するインターンシップです。申し込み締め切りは7
月13日(金)で、定員は2~3名を予定しています。この機会にインターンシップを経
験してみてはいかがでしょうか。

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3【周辺情報】●7月7日に国際光デー記念シンポが開催されます
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★日本学術会議総合工学委員会ICO分科会主催による「国際光デー記念シンポジウ
ム」が7月7日(土)午後3時から東京・乃木坂の日本学術会議講堂で開かれます。
2015年の国際光年(IYL 2015)活動を契機に、ユネスコが2017年11月に国際光デー
(International Day of Light)を制定し、2018年5月16日(水)に第1回が開催され
ました。それを記念して日本でも光の科学と技術の黎明期を振り返り、また、今後の
発展を期して「国際光デー記念シンポジウム」を開催するものです。

 同シンポでは“レーザーの黎明期”をテーマに、霜田光一東京大学名誉教授、“光
と脳科学”をテーマに、宮脇敦史理化学研究所チームリーダーからそれぞれ講演を予
定しています。また、講演に先立って、国際光学委員会(ICO)前会長の荒川泰彦東
京大学特任教授(東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構量子イノベーショ
ン協創センター長)から記念シンポの趣旨説明があるほか、日本学術会議会員でもあ
る五神真東京大学総長より挨拶があります。皆様の奮っての参加をお願い致します。

 ↓↓↓(詳しくは)↓↓↓
 https://goo.gl/7YPSk9

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4【受賞情報】●舘林、野村先生がレーザー学会奨励賞、独イノベ賞をそれぞれ受賞
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★機構の特任助教を務めた舘林潤大阪大学講師(工学研究科マテリアル生産科学専
攻)が5月31日(木)に第42回レーザー学会奨励賞を受賞しました。同賞はレーザー
学会会員で、示唆に富み、独創的な将来性ある研究に対して与えられる賞。授賞理由
は「ナノワイヤ量子ドットレーザーの室温動作」で、機構在職中からの成果が評価さ
れました。

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★野村政宏准教授(生産技術研究所)が6月26日(火)にドイツ・イノベーション・
アワード「ゴットフリード・ワグネル賞2018」を受賞しました。在日ドイツ商工会議
所など主催による45歳以下の若手研究者に与える賞で、日独間の産学連携促進と優れ
た日本の若手研究者の支援を目的としています。野村准教授は4部門ある中のエネル
ギー部門の受賞で、授賞理由は「Thermal conduction control by phonon
engineering and thermoelectric energy harvesting application」です。26日の授
賞式では、パネルトークもあり、同賞第1回受賞者の染谷隆夫教授(工学系研究科)
も登場しました。授賞式の様子はドイツ・イノベーション・アワードの下記HPにアッ
プされています。

 ↓↓↓(詳しくは)↓↓↓
 http://german-innovation-award.jp/?JA

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5【基金情報】●古澤研究室の光量子コンピューター研究支援が東大基金に
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★古澤研究室(古澤明教授)の光量子コンピューター研究支援基金が東京大学基金の
“教育・研究の支援”対象プロジェクトとして、6月14日(木)に東大基金ホーム
ページにアップされ、本格始動しました。部局基金が多い中、単独研究室の研究加速
を支援する目的基金として、東大基金に組み込まれるのは珍しいケースといえます。
昨今、量子コンピューターの開発競争が世界的に際立っている中、大規模光量子コン
ピューター実現に向けた古澤研究室の研究取り組みが注目されている一つといえそう
です。

 ↓↓↓(詳しくは)↓↓↓
 http://utf.u-tokyo.ac.jp/project/pjt93.html

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6【メディア情報】●機構関係者に関する掲載記事を紹介します
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★樽茶清悟教授(工学系研究科)ら理化学研究所創発物性科学研究センター量子機能
システム研究グループなどの国際共同研究グループが、3つの電子スピン量子ビット
からなる半導体量子ドット素子において、隣り合わない量子ビット間に量子もつれ状
態を生成・観測した成果が報道されました。この非隣接量子もつれ状態の生成は、半
導体量子ビットを用いた量子コンピューターの大規模化を促す成果と期待されます。
この成果論文は5月30日付Nature Communicationsに公開されました。

 ↓↓↓(プレスリリース)↓↓↓
 http://www.t.u-tokyo.ac.jp/soe/press/setnws_201805311040130145134944.html
 ◎OPTRONICS   5月31日 
        理研ら,隣り合わないスピン量子ビット間の量子もつれを生成
  http://www.optronics-media.com/news/20180531/51462/
 ◎EE Times   6月 5日 量子コンピュータの大規模化に道:
             非隣接スピン量子ビット間の量子もつれ生成に成功
  http://eetimes.jp/ee/articles/1806/05/news039.html
 ◎日経産業新聞 6月15日付6面 量子もつれ、離れた時でも
                 理研、量子力学で新技術

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★勝本信吾教授(物性研究所)らがプラズモン励起で量子ホール効果のエッジ状態の
変化を高感度に測定した成果が報道されました。GaAs/AlGaAsヘテロ接合界面に形成
される2次元電子系の基板表面に配置したゲート電極に負バイアスを加えることによ
り、プラズモン励起周波数が変化していることを導き出しました。量子ホールエッジ
状態に関する基礎的知見をもたらすとともに、プラズモニクスとしてデバイス応用が
考えられているプラズモン制御への指針にもつながる成果です。この成果論文は5月
24日(木)付でJournal of Physical Society of Japanオンライン版に公開され、
JPSJ編集委員会により注目論文(Papers of Editor’s Choice)に選定されました。

 ↓↓↓(プレスリリース)↓↓↓
 http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=5444
 ◎OPTRONICS 6月6日 東大,量子ホールエッジ状態に新たな知見
  http://www.optronics-media.com/news/20180606/51550/

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★田中雅明教授(工学系研究科)らがn型強磁性半導体とp型半導体からなるスピン・
エサキダイオードを作製し、スピン依存バンドエンジニアリングによる磁気伝導度の
制御に成功した成果が報道されました。n型強磁性半導体(In, Fe)Asとp型InAsから
なるスピン・エサキダイオードを作製し、バイアス電圧によって電流に寄与する電子
を伝導帯から不純物帯に切り替え、電流の磁場応答の強度と符合を大きく変化させた
成果で、従来の半導体デバイスにスピン自由度を加えた新たな機能が期待できます。
この成果論文はAPPLIED PHYSICS LETTERS 3月7日付オンライン版に公開されました。

 ↓↓↓(プレスリリース)↓↓↓
 https://research-er.jp/articles/view/71269
 ◎OPTRONICS 6月6日
         東大ら,n型強磁性半導体ダイオードの磁気伝導度を制御
  http://www.optronics-media.com/news/20180606/51552/
                                   
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7【会議紹介】●関連会議・行事を紹介します
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★8月5日(日)-10日(金)「International Symposium on Growth of
III-Nitrides(ISGN-7)」(@University of Warsaw, Krakowskie Przedmie?cie
26/28, Warsaw, Poland)
 https://www.unipress.waw.pl/isgn-7/

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★9月30日(日)-10月4日(木)「31st Annual Conference of the IEEE
Photonics Society(IPC 2018)」(@Hyatt Regency Reston, President street,
Reston, VA, USA)
 http://ieee-ipc.org/

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★10月14日(日)-17日(水)「The 2018 IEEE 13th Nanotechnology Materials &
Devices Conference (NMDC 2018) 」(@Embassy Suites Downtown hotel,
Portland, Oregon, USA)
 http://www.ieeenmdc.org/nmdc-2018/

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★10月21日(日)-24日(水)「International Symposium on Imaging, Sensing,
and Optical Memory  2018(ISOM ‘18)」(@Kitakyushu International
Conference Center, Kitakyushu, Japan)
 http://www.isom.jp/

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★10月21日(日)-25日(木)「14th International Conference on Atomically
Controlled Surfaces,Interfaces and Nanostructures (ACSIN-14)/26th
International colloquium on Scanning Probe Microscopy (ICSPM26)」(@Sendai
International Center, Sendai, Japan)
 http://dora.bk.tsukuba.ac.jp/event/acsin14/?

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■【編集後記】梅雨明け前に真夏のような暑さが到来し、面食らうこの頃です。今号
では古澤研の光量子コンピューター研究支援プロジェクトについてとりあげさせてい
ただきました。目的基金の一つとして東京大学基金に組み込まれたわけですが、ちょ
うど、6月15日のPIセミナーの中で、講師の武田助教から報告されました。東大基金
のHPの2015年度報告によると、全体で28億円余りの寄付に上るそうです。そのうちほ
とんどが目的基金に寄付されているようです。ちなみに京都大学の山中伸弥教授率い
るiPS細胞研究基金は2017年度で東大基金の年間寄付額を上回る37億円というから驚
きです。山中教授がマラソン参加でアピールしたことも奏功したのか、今や基金運用
で優秀な有期雇用研究者を無期雇用に転換できるほどというから、若手研究者の処遇
改善とともに、研究促進にも有効に働いたのではと勝手に思っています。光量子コン
ピューター研究にしろ、iPS細胞研究基金両者に共通するのは、長期的研究が求めら
れるため、末永いお付き合いを願っている点。国の財政逼迫からか、研究資金も自助
努力が求められる時代に入ったということでしょうか。(O)
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■発行:東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構
├ http://www.nanoquine.iis.u-tokyo.ac.jp/
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