<公開シンポジウム報告>
平成19年12月21日
東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構

公開シンポジウム
「ナノ量子情報エレクトロニクスシンポジウム」
開催される


 東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構は、財団法人光産業技術振興協会、東大グローバルCOE「セキュアライフ・エレクトロニクス」と共催し、平成19年10月24、25の両日、駒場汽ャンパス数理科学研究科棟大講義室において「ナノ量子情報エレクトロニクスシンポジウム」を開催しました。同シンポは平成18年10月に当機構が発足して以来、1年余の研究活動や成果を公開する趣旨で開いたものです。出席者数は約320名に達し、両日とも会場は満席状態となりました。ユビキタス情報社会にイノベーションをもたらす目的で進めてきた産学連携研究活動への関心は高く、2日間、積極的な討論が繰り広げられました。
 シンポジウムは8つのセッションと多彩な構成で進められました。最初のオープニングセッションでは、来賓ご挨拶などに加え、機構長による全体を総括する基調報告と現在、最もホットな研究分野に関して3つのレビュー講演を受けました。セッション2以降、機構のナノ量子情報エレクトロニクス、次世代ナノエレクトロニクス、量子情報科学技術基盤の3つの各研究部門から具体的な成果報告講演が5セッションに分かれて行われました。その間に初日の特別セッション、2日目の企業ラボからの報告などが盛り込まれ、シンポジウムに一層の彩りを添えました。とくに特別セッションでは、奥村直樹総合科学技術会議議員、小宮山宏東京大学総長の特別講演および各協働企業責任者による産学連携に関するパネル討論が会場の関心を呼び、その後の討論にキーワードを提供するなど、好影響を与えました。

〔第1セッション:オープニングセッション〕
 平川一彦教授の座長のもと、前田正史生産技術研究所長が「機構の産学連携研究に生研も全面的にバックアップしたい」と挨拶し、開幕を告げました。続いて東京大学を代表して岡村定矩副学長が「ナノ量子機構は、学内外の広い連携、東大企業ラボを核とした強固な産学連携など、重要なキーワードを提示している。大学の学術力と産業界の技術力とを融合し、世界トップレベルの拠点に育てたい」と力強い挨拶を述べました。
 来賓には文部科学省科学技術・学術政策局の行川浩史戦略官がみえられ、「政策誘導型の先端融合COEは第3期科学技術基本計画の中でも重要。ナノ量子情報の連携研究拠点はすぐれた取り組みと位置づけられている。有望な取り組みであり、世界の拠点化を目指してほしい」と激励のお言葉をいただきました。
 続いて荒川泰彦機構長が「ナノ量子情報エレクトロニクスの研究開発の展開」と題して、機構の活動全般に関する基調報告を行いました。拠点形成・システム改革および研究開発の2本柱について、具体例を報告、「ミッションステートメントの相当部分はすでに達成しています」と総括しました。またNICTとも連携して、量子暗号通信の新地平となる新たな実験計画など、今後の展開にも触れ、基調報告としました。
 次に量子情報物性、量子暗号通信、フレキシブルエレクトロニクスの3つの分野の現状と展望について、それぞれ樽茶清悟教授、今井浩教授、染谷隆夫准教授がレビュー講演を行いました。


〔第2セッション:ナノ量子情報エレクトロニクス気よびポスターレビュー〕
 午後に入り、五神真教授の司会のもと、具体的な機構の研究成果を報告するセッション2に移り、古澤明教授、臼杵達哉特任教授、伊藤公平教授(慶応義塾大学)から講演を受け、その後52件のポスター発表のプレビュー講演が行われました。若手研究者が一人1分の持ち時間で次々とポスター発表の概要を報告、幅広い研究内容を思わせるプレビュー講演となりました。


〔第3セッション:特別セッション〕
 休憩をはさんで、荒川機構長の座長により、いよいよ当公開シンポの目玉である特別セッションに入りました。特別講演は奥村直樹総合科学技術会議議員が「我が国の科学技術政策とイノベーション創出」と題して、6月1日に閣議決定されたイノベーション25の背景などを踏まえ、技術革新ロードマップ、研究資源の投入、ナノエレクトロニクスへの期待、基礎からのイノベーション創出と多岐に渡る論点で講演。「5つの目指すべき社会を実現するためには、自然体では実現せず、社会システムの改革を通してのみ実現する」と力説。とくに「ナノテクノロジーは4重点分野の一つであるが、日本経済が右肩上がりになってほしい観点からイノベーションに貢献していただきたい」とご講演を締めくくりました。
 続いて本先端融合COEの総括責任者でもある小宮山宏総長が『ものづくり「課題先進国」日本』と題して特別講演に立ち、「日本は環境汚染、ものづくりなど、その時々の課題にいかに対応するか迫られる中で、先進性を発揮してきた。こうした日本の課題先進国のマインドが21世紀地球の将来像となり、世界の範たりうる」と強調しました。さらに「20世紀の負の遺産である環境資源問題と知識の膨張によって全体像がみえにくくなった現状の課題に対して、知の構造化に取り組む必要がある」と訴えました。
 特別講演を受けて、「産学連携への期待」をテーマに、東大企業ラボを構成する協働企業責任者4氏によるパネル討論に移りました。太田賢司シャープ代表取締役専務、國尾武光NEC執行役員兼中央研究所長、武田英次日立製作所執行役常務、村野和雄富士通研究所代表取締役社長の4氏が登壇し、司会役の荒川機構長の求めに応じて各パネラーが持論を展開しました。「産学連携によって研究開発のスピードアップ、知とノウハウの融合による新分野開拓を図りたい」、「次代の指導原理は何かというパラダイムシフトへのヒントを産学連携から学びたい」、「大学の学問の知、産業界の技術の知、マーケットの社会の知を融合した総合知の創出を産学連携に求めたい」、「グローバル競争に勝ち抜くために、デマンドプル型イノベーションが必要になる。戦略的な外部連携の強化によって、Win−Winな関係、スピードアップ、市場競争力の向上が問われる。そのような産学連携のあり方として、産学で役割分担しかつ出口イメージの共有が大切」といった期待から具体論に裏打ちされたあるべき論まで多様な意見が出されました。このパネル討論には、会場から江崎玲於奈先生も登壇して、熱い思いを込めて発言されたほか、パネラー、会場との双方向討論に発展するなど、盛り上がりを見せたパネル討論となり、予定時間を大幅に超過し18:45まで続きました。


〔懇談会〕  会場を移し、懇談会に入りました。荒川機構長の司会のもとに、最初に江崎玲於奈先生の音頭で乾杯し、活発なパネル討論の余韻にひたりながら、なごやかに懇談のひとときを過ごしました。

〔セッション4:次世代ナノエレクトロニクス〕
 翌25日も朝から参加者が詰めかけ、新規の参加登録もあり、会場は昨日に続く満席状態となりました。まずセッション4では竹内繁樹教授(北海道大学)が座長を務め、次世代ナノエレクトロニクス部門の報告として大津元一教授、野田進教授(京都大学)、平川一彦教授、田中雅明教授、平本俊郎教授がそれぞれの分野で最新成果を報告しました。


〔セッション5:産学連携研究開発の展開 〜企業からの報告〜〕
 大津元一教授の座長のもとに、東大企業ラボ群を構成する協働企業各社の代表者から「産学連携研究開発の展開」をテーマに講演いただきました。高橋明客員教授(シャープ基盤技術研究所長)、長我部信行客員教授(日立製作所基礎研究所長)、横山直樹客員教授(富士通研究所フェロー兼ナノテクノロジー研究センター長)、曽根純一客員教授(NEC中央研究所支配人)がそれぞれ自社の産学連携に対する考えや東大企業ラボにおける取り組みについて報告しました。


〔セッション6:ポスターセッション〕
 セッション6では昼食を兼ねてポスターセッションを開きました。前日から準備した52件のポスター発表があり、昼食のサンドイッチをつまみながら、具体的成果についての熱心な討論が繰り広げられました。


〔セッション7:量子科学技術基礎〕
 セッション7では岩本敏准教授が座長を務め、量子情報科学技術基盤研究部門の研究成果に関して、五神真教授、山内薫教授、安部英介助教(勝本信吾教授代理)、高橋琢二准教授、Dennis Guimard特任講師がそれぞれ講演しました。


〔セッション8:ナノ量子情報エレクトロニクス供
 最後のセッション8では高橋琢二准教授が座長を務め、初日のセッション2に続き、ナノ量子情報エレクトロニクス研究部門の最新の研究成果に関して、竹内繁樹教授、町田友樹准教授、村尾美緒准教授、岩本敏准教授、北村雅季特任准教授、中岡俊裕特任講師がそれぞれ講演を行いました。



〔閉会〕  閉会の挨拶を荒川機構長が行い、「産業界とのインタラクションをいい形で展開し、日本の強化につながる科学技術の基礎を生み出す意を強くした。2日間に渡り大変熱心にご討論いただきました」と謝意を込めた閉会の挨拶を行い、2日間に渡る全日程を終えました。