国立大学法人東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構

アイオーコア株式会社

高温安定動作を可能にする新型量子ドットレーザの提案と実証
―光電融合により、幅広いコンピューティング分野での温室効果ガスの排出量削減へ道を拓く―

発表のポイント

  • 高温(150℃超)での安定動作を可能にする量子ドットレーザの新構造を提案しました。
  • 従来の量子ドット構造に横方向ポテンシャル障壁層を新たに導入し、量子ドットレーザの更なる高温安定動作を実証しました。
  • 光配線のデータセンターやハイパフォーマンスコンピュータへの応用のみならず、自動車分野への光配線の導入に道を拓き、光電融合による2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、温室効果ガスの排出量削減に大きく貢献します。

発表概要

国立大学法人東京大学(以下、東京大学)ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の荒川泰彦特任教授らとアイオーコア株式会社(以下、アイオーコア)の角田雅弘研究員らは、従来の量子ドット構造に横方向ポテンシャル障壁層を導入することを提案しました(図1)。この新構造は、基底準位と励起準位のエネルギー差の増大を図ることで熱擾乱の影響を抑え、量子ドットレーザ(注1)の更なる高温安定動作を可能とします。試作した量子ドットレーザを評価し、150℃において閾値電流(注2)の40%低減、およびレーザ発振温度は150℃から160℃へ10℃の向上を達成することにより、高温動作安定性の実証に成功しました。
光配線のコンピューティング分野への導入では、レーザ光源の高温安定動作が課題でした。本提案による量子ドットレーザは動作温度範囲の拡大が見込め、光配線の高い信頼性につながります。今後は、本提案による量子ドットレーザの信頼性検証を進め、光配線の社会実装を加速してまいります。今回の提案・実証は、光配線のデータセンターやハイパフォーマンスコンピュータへの適応のみならず、自動車分野への光配線の導入に道を拓き、光電融合による2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、温室効果ガスの排出量削減に大きく貢献します。

発表内容

[研究詳細]

学会情報

〈学会名〉 Compound Semiconductor Week (CSW) 2023
〈題名〉 Improvement of Temperature Stability of Threshold Current of InAs/GaAs Quantum Dot Lasers with AlGaAs Lateral Potential Barrier Layers
〈著者〉 Masahiro Kakuda, Natalia Morais, Jinkwan Kwoen, Yasuhiko Arakawa

研究助成

本研究は、グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築/次世代グリーンデータセンター技術開発/光電融合デバイス開発プロジェクト(JPNP21029)の支援により実施されました。

問合せ先

国立大学法人 東京大学 ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構
特任教授 荒川泰彦(あらかわ やすひこ)

TEL:090-5390-0917  Email: arakawa@iis.u-tokyo.ac.jp
アイオーコア株式会社 企画部
部長 中田正文(なかだ まさふみ)
TEL:03-6265-3956、Email: m-nakada@aiocore.com